
近年、多くの企業で会計システムのクラウド移行が進んでいます。従来のオンプレミス型は、データの分断や運用コスト増大、リアルタイムな経営状況の把握が困難といった課題を抱えていました。場所やデバイスを選ばず、常に最新の状態で利用できるクラウド会計システムは、これらの課題を解決し、経営の可視化を実現します。
さらにDX推進に伴い、Salesforce(CRM)と会計システムの連携ニーズも高まっています。Salesforceの営業データと会計データをプラットフォーム上で統合することで、業務効率は飛躍的に向上し、より高度な経営判断が可能になります。
本記事では、クラウド会計システムへの移行を成功させるポイントと、Salesforceとの連携による具体的なメリットについて、Salesforce上で利用できる「mitoco 会計」の導入事例を交えながら解説します。
近年、企業の基幹業務を支えるERP(Enterprise Resource Planning)システム、特に会計システムや会計ソフトの分野において、クラウドへの移行が顕著なトレンドとなっています。かつては企業のERP導入において大規模な初期投資と専門知識を要するオンプレミス型のシステムが主流でしたが、ビジネス環境の急速な変化への対応や、より柔軟な働き方の実現、そしてコスト構造の最適化といったニーズの高まりから、クラウドベースのソリューションへの関心が高まっています。
一部の外資系ERPパッケージは、日本の商習慣への対応やカスタマイズの複雑さ、高額なライセンス費用や、長年に渡り加えられたカスタマイズによる保守費用の高額化などが課題となるケースも散見され、リプレイスの検討対象となることがあります。こうした中で、より柔軟性があり、導入・運用コストを抑えられるクラウド型システムへの移行を検討する企業が増加しています。
オンプレミス型システムからクラウド型システムへの移行が進む背景には、いくつかの明確な理由が存在します。
経営状況のリアルタイムな可視化
従来のオンプレミス型システムでは、各システムが独立しデータが分断されがちでした。 これにより、経営状況を正確かつタイムリーに把握することが難しく、迅速な意思決定の妨げとなることがありました。クラウド型システムでは、データが一元的に管理・分析されるため、経営層や現場は常に最新の情報を基にした判断が可能となります。
運用・保守コストの最適化
オンプレミス型システムでは、法改正への対応やシステムのアップデート、サーバーの維持管理などに多大なコストと人的リソースが必要でした。 クラウド型システムでは、これらの運用保守は基本的にサービス提供事業者側で行われるため、企業はシステム運用に関する負担を大幅に軽減できます。
柔軟なアクセス環境の実現
従来のオンプレミス型システムは、特定の場所や端末からしかアクセスできないという制約がありました。 クラウド型システムであれば、インターネット環境さえあれば場所やデバイスを問わずにシステムを利用でき、リモートワークや外出先からの業務処理にも柔軟に対応できます。コロナウイルスの蔓延を機に、働き方の多様性が進み、経理部門でもリモートワークなどが進んでいます。
データ連携の容易性と拡張性
多くのクラウドサービスはAPI連携などを通じて他のシステムとの連携が比較的容易であり、ビジネスの成長や変化に合わせたシステムの拡張も柔軟に行えます。特にSalesforceのようなCRM/SFAプラットフォームを利用している企業にとっては、同一プラットフォーム上や連携性の高い会計システムを導入することで、顧客情報から会計情報までを一気通貫で管理し、より深い顧客理解や営業戦略の最適化に繋げることが可能です。
これらの背景から、会計システムおよび会計ソフトのクラウド移行は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、企業競争力を強化するための重要な経営戦略の一つとして位置づけられています。
もちろん、オンプレミス型にもメリットがあるため、単純にクラウドへ移行すれば良いというわけではありません。
オンプレミスとクラウドの比較を見ていきましょう。
会計システムを導入または刷新する際、オンプレミス型とクラウド型のどちらを選択するかは重要な経営判断となります。それぞれにメリットとデメリットが存在するため、自社の規模、業種、業務プロセス、将来の展望などを総合的に勘案し、最適なシステム形態を選択することが求められます。
| オンプレミス型会計システム | クラウド型会計システム |
初期コスト | 高(サーバー購入、ソフトウェアライセンス、環境構築など) | 低(ハードウェア購入や環境構築が不要な場合が多い) |
運用・保守コスト | 高(サーバー管理、アップデート、法改正対応などを自社で実施) | 低(サービス提供事業者が実施、月額・年額利用料に含む場合が多い) |
カスタマイズ性 | 個別に開発を行うことで柔軟に対応可能(自社の業務プロセスに合わせて柔軟に構築・改修可能) | 制約あり(標準機能が中心となる場合がある) |
データ管理 | 自社内(セキュリティポリシーに基づき自社で厳格に管理) | サービス提供事業者に依存(堅牢なセキュリティを持つデータセンターで管理されることが多いが、ベンダーによる) |
システム連携 | 追加開発などが発生する場合あり(データのサイロ化、連携要件が発生した場合には都度改修が必要) | 比較的容易(API連携などで他システムと連携しやすい。特に同一プラットフォーム上のシステム連携はスムーズ) |
拡張性 | 制限あり(ハードウェア増設やシステム改修に時間とコスト) | 高(ビジネスの変化に合わせてリソースや機能の追加が柔軟) |
近年では、クラウド型会計システムのメリットである「リアルタイムな経営状況の可視化」や「運用コストの最適化」、「柔軟なアクセス環境」などが重視される傾向にあり、多くの企業でクラウドへの移行が進んでいます。しかし、企業規模や自社独自の要件・仕様がある場合にはオンプレミスで構築する方がカスタマイズ性、データセキュリティといった面でメリットが多くあります。
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が企業にとって喫緊の課題となる中、部門ごとに最適化・独立して運用されてきた基幹システム間の連携に対するニーズが急速に高まっています。特に、顧客接点の最前線である営業活動を支える営業管理システム(SFA/CRM)や、受注から納品・請求に至るプロセスを管理する販売管理システムと、企業の財務状況を正確に把握・管理する会計システムとのデータ連携は、DX推進の成否を左右する重要なポイントと言えます。
従来のシステム環境では、例えば営業部門がSFA/CRMに入力した案件情報や顧客情報、販売管理システムで処理された受注・売上データなどを担当者が会計システムへ手作業で転記していたり、バッチ処理で連携したりすることが一般的でしたが、以下のように課題を抱えている企業が多くありました。
データの二重入力・三重入力による非効率と入力ミス
販売管理から会計システムへなど、同じ情報を複数のシステムに入力する手間が発生し、人的ミスを誘発する可能性がある。
リアルタイムな情報共有の欠如
CSVでの手作業によるデータ連携などが発生し、システム間でデータが即座に同期されないため、営業部門と経理部門間での情報共有にタイムラグが生じ、迅速な意思決定を妨げていました。
データの分断による全体像把握の困難さ
各システムにデータが散在することで、顧客ごとの収益性分析や、販売実績に基づいた精度の高い売上予測、さらには部門を横断した経営分析などが困難でした。
DXの潮流において企業が目指すのは、データに基づいた客観的かつ迅速な意思決定と、それによる業務プロセスの最適化、そして新たな価値創造です。これを実現するためには、企業内に散在するデータを収集・統合し、多角的に分析できる環境が不可欠となります。
具体的には、営業管理システム(SFA/CRM)と会計システムを連携させることで、以下のようなメリットが期待できます。
取引先の情報と連動したレポーティング
営業担当者が管理する取引先の会社情報に、会計情報(原価、経費など)を紐付けることで、取引先ごとの売上などをリアルタイムに把握し、より戦略的な営業活動を展開できます。
精度の高い売上管理と実績対比
SFA/CRM上の受注情報を会計システムと連携させることで、より正確な実績管理が可能になります。レポートによる予実管理により実績との差異分析を迅速に行うことが可能になります。
発生源の迅速な特定
入金遅延などが発生した場合、ドリルダウンして情報を確認することで発生源となる取引先や商談、営業担当者が迅速に特定できます。請求に関するフォローや確認といった対応がすぐにでき、会計業務の精度があがります。
多くの企業で導入されているSFA/CRMの代表格であるSalesforce。
その堅牢かつ柔軟なプラットフォーム上に構築された会計システムとして「mitoco 会計」があります。AppExchange製品として、Salesforceユーザーはすぐに導入ができる会計システムです。また、現在Salesforceを利用していない企業でもクラウド会計システムとして、強固なセキュリティのもと利用することができます。
会計システムとSalesforceのデータの相互連携ではなく、Salesforceプラットフォーム上で会計システムを利用することで、単なる経理業務のクラウド化に留まらない、多岐にわたるメリットを企業にもたらします。
ここでは、その中でも特に重要な3つのメリットについて解説します。
企業の財務情報を扱う会計システムにとって、セキュリティの確保は最重要課題です。Salesforceプラットフォームは、世界中の15万社以上の企業に利用されており、国際的な第三者認証を多数取得した世界トップクラスのセキュリティ基盤を誇ります 。重要な会計データを、堅牢なセキュリティで保護された環境で管理できることは、経営者にとって大きな安心材料となります。自社で同レベルのセキュリティ環境を構築・維持するには莫大なコストと専門知識が必要ですが、Salesforceプラットフォーム上の会計システムを利用することで、この高度なセキュリティを標準で活用することが可能です 。
従来のオンプレミス型会計システムでは、「特定のPCでしか作業できない」「会社に行かなければ必要なデータを確認できない」といった物理的な制約が課題でした 。Salesforceプラットフォームはマルチデバイスに標準対応しており、PCはもちろん、スマートフォンやタブレットからも、いつでもどこでもセキュアにアクセスできます 。これにより、経理担当者が自宅からセキュアに会計情報にアクセスしたり、経営者が移動中に最新の業績レポートを確認したりと、多様化する働き方に柔軟に対応し、業務のスピードと効率を飛躍的に向上させることが可能です。
Salesforceプラットフォーム上に会計システムを構築する最大のメリットは、SFA/CRMに蓄積された営業データと会計データをシームレスに連携・統合できる点にあります。これにより、これまで分断されがちだった「営業活動」と「企業の収益」を直接的に結びつけた分析がリアルタイムで可能になります。
例えば、以下のようなレポートやダッシュボードを簡単に作成・閲覧できます。
取引先別の売上・利益分析:
どの取引先がどれだけ収益に貢献しているかを正確に把握できます。
営業活動と売上の相関分析
営業担当者の活動量や内容が、どの程度売上や利益に繋がっているかを可視化し、効果的な営業プロセスを特定できます 。
売上実績と売掛金残高の一元管理
売上状況と入金状況を同じダッシュボードで確認し、キャッシュフローの健全性を常にモニタリングできます。未入金の情報などをダッシュボードで営業部門と共有することで、早期に対応することが可能になります。
このように、営業情報と会計情報を掛け合わせることで、単なる過去の実績報告に留まらない、未来の経営判断に直結するインサイトを得ることができます 。弊社が提供する「mitoco 会計」は、Salesforceプラットフォーム上でこれらのメリットを活かせるクラウド会計システムであり、お客様のデータドリブンな経営判断を強力にサポートします 。
多くの企業が営業活動の基盤としてSalesforceを活用していますが、その効果を最大化するためには、会計システムを含むバックオフィス業務との連携が不可欠です。ここでは、株式会社九州テン様(以下、九州テン)が、Salesforceプラットフォーム上で稼働する「mitoco 会計」を導入し、会計業務の一元化と全社的な業務改革に乗り出した事例をご紹介します。
1967年に長崎県佐世保市で創業し、ハードウェア・ソフトウェア開発から電気通信工事ま・保守サポートまで、幅広いITソリューションを提供する九州テン 。同社では、長年利用してきたオフコンの販売管理システムをマイグレーションして使い続けるなど、フロントオフィスからバックオフィスまで、異なるベンダーのシステムが各部門でバラバラに稼働している状態でした 。
これらの複数システムを自社で連携させて運用していましたが、その非効率な運用は限界に達しており、この複雑なレガシー環境がDX推進の大きな障壁となっていました 。
この課題を解決するため、九州テンは2023年に全社規模のシステム刷新を決断しました 。まず最初に着手したのは、システムの基盤となるプラットフォームの統一です。AppExchangeを活用した柔軟な機能拡張性を評価し、プラットフォームをSalesforceに統一することを決定しました 。
その上で会計システムとして「mitoco会計」を選定した理由は、以下の点にありました。
Salesforceとのシームレスな連携:
これから社内システムの基盤となるSalesforceと完全に連携し、会計情報と、営業の商談や顧客情報といった非会計情報を統合的に管理・分析できる点を重視しました 。
全部門を横断したデータ分析の実現:
営業部門だけでなく、製造工場や工事部門の生産・管理情報までをも会計情報と結びつけ、全社横断で分析できることを重要視しました 。
将来性:
会計や販売管理を統合した「mitoco ERP」により全社データを一元化し、将来的には「mitoco Al」と組み合わせることで、効率的な意思決定に繋がる点を高く評価しました。
「mitoco会計」の導入により、九州テンでは以下のような効果を期待されています。
経理部門の負担軽減とコスト削減:
2023年10月に始まったインボイス制度への対応として、事業者番号の確認作業の自動化が実現し、確認作業の負担軽減。 電子帳簿保存法に対応したデータ管理やタイムスタンプ付与も可能となり、経理の現場負担が削減されると期待 。 従来オンプレミス環境で毎年発生していた制度改正やOS対応に伴う維持費用がなくなり、コスト削減効果も見込んでいます 。
決算の早期化とデータドリブンな経営:
各部門で行っていたレポート作成業務などを効率化し、決算の早期化を目指します 。 「mitoco Al」と組み合わせることで、受注見込みや部門別売上一覧といった経営判断に必要な情報を瞬時に把握できる体制を構築します 。
全社的な生産性向上:
全社員が事務作業に追われることなく、本来の業務に注力できる体制への改善を目指します 。
九州テンの事例は、会計システムを単なる業務ツールとして捉えるのではなく、Salesforceを中心とした全社的な情報基盤に統合することで、業務効率化はもちろん、企業全体の変革やAI活用を目指した事例といえます。
本記事では、クラウド会計システム、特にSalesforceプラットフォーム上に構築された会計システムがもたらす価値について解説しました。
多くの企業が、従来のオンプレミス型会計システムや、部門ごとに導入されたSaaSによってデータのサイロ化という課題に直面しています 。営業部門が持つSFA/CRMの顧客情報や商談データと、経理部門が管理する会計データが分断されているため、リアルタイムに経営状況を正確に把握することが困難でした 。
Salesforceプラットフォーム上に構築された会計システムは、この課題に対する強力な解決策となります。最大のメリットは、これまで分断されていた営業データと会計データを一つのプラットフォーム上でシームレスに統合・連携できる点です 。
株式会社九州テン様の事例にもあるように、このデータ統合によって、取引先別の入金情報などがリアルタイムに可視化され、データに基づいた迅速かつ的確な経営判断を下すことが可能になります 。さらに、インボイス制度や電子帳簿保存法といった法改正への迅速な対応、ペーパーレス化による業務効率の向上、場所を選ばない柔軟な働き方の実現など、そのメリットは多岐にわたります 。
会計システムを単なるバックオフィスツールとして捉えるのではなく、Salesforceを中心とした全社の情報基盤に組み込むこと。それは、現代の不確実なビジネス環境を勝ち抜くための、重要な経営戦略と言えるでしょう。

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